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なりわいの家

設計案/Architectural Concept

 

都心からすぐの建て込んだ住宅街。道幅が狭く人通りの多い商店街に面した小さな角地に、これからの時代にふさわしい建売住宅の形を提案しました。

 

これまでの住宅は「家庭」と「労働」とを完全に分離する生き方を前提にしてきました。特に建売住宅は通勤者しか想定しておらず、家の中に労働の場はないか、あっても申し訳程度の書斎コーナーが関の山でした。

 

「なりわいの家」は、「家庭」と「労働」を一体で連続したもの=「生業(なりわい)」と捉え、より多様な働き方・生き方を可能にします。


従来の画一的な家庭観を象徴する「LDK」を解体し、変化に富んだ空間で「プライベート」と「社会」との間を段階的につなぐことで、決まりきった住宅としてだけでなく、オフィスや店舗、アトリエなど、住む人自身がそれぞれの空間の使い方を選び、生業の拠点としての住まいを主体的に組み立てることを可能にします。

 

天井が高く、簡素な仕上げの空間は、家庭的な用途はもちろん、小規模なオフィス、カフェ、店舗、ギャラリー、アトリエ、ジムや稽古場……と多様な使い方へ容易に改装でき、自分ならどう使うだろうかと想像をかき立てる。大型の引き戸を開け放てば目の前の商店街と直につながり、個人と社会とが交流する経済活動の場に様変わりする。
「隠せるキッチン」で柔軟な使い方に対応。小上がりをステージに、土間を客席にすればミニコンサートも可能だ。
小上がりで一呼吸おいて、プライベートとの緩衝地帯に。あるいは仕事場や団欒の場にも。2階への階段を引き戸で施錠すれば、家の中にさらに公私の境界を設け、セキュリティを高めることができる。
より落ち着きのある2階はくつろぎの場としても、あるいは集中して作業できるスペースとしても。窓台、階段、奥の小上がりと、それぞれ異なる高さに腰かければ団欒の輪ができあがる。
寝る部屋、食べる部屋、居る部屋……など、あらかじめ機能を限定して細かく部屋を区切るのではなく、多様な濃淡をつけた柔軟な空間を用意し、住む人自身が場所ごとの性格を感じ取りつつ、生き方に合わせて区切り方を選べるようにした。小上がりスペースを閉じればよりプライバシーを高めた個室が出現する。開いても閉じても、光と風が通り抜け健康な室内環境が保たれる。
地上の喧騒から離れるにしたがってプライバシーの割合が増し、静謐で安心感ある空間が現れる。あらゆる方向から法規制のかかる都心の狭小地だが、デッドスペースを有効活用した空調や収納など、空間の純度を高め、狭さを感じさせない工夫をちりばめた。
家具などで仕切って寝室とするもよし、大空間を生かした創作の場とするもよし。気積の大きな懐の深い空間が、住む人の意志ある選択を柔軟に包み込む。

 



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